私が子どもの頃に遊んでいたおもちゃを思い出してみると、
ジェニーちゃん(※りかちゃんじゃないw)、戦隊ものの変身グッズ、たいこ、ニューブロック…。
あとは妹から借りたキティちゃん付きのプラスチック製のおままごとくらい?
なんとなく積み木もあったような気がするけど、
いわゆる“木のおもちゃ”とは縁遠く、
そもそも家にそんなにおもちゃがあった記憶もありません。
そんな私が木製おもちゃにハマったのは、ユシラのカラームカデというおもちゃとの出会いでした。
きっかけは、息子を出産した産婦人科が開催していた同じ月齢の親子を集めた交流会。
そこで講師として登場した、札幌の老舗おもちゃ屋『ろばのこ』の店主・藤田さんが紹介してくれたのが、
ちょっと変わった見た目と、面白い動きをするカラームカデだったのです。
カラームカデを目にした息子は、じっと見入り、おもむろに手を伸ばしました。
その瞬間、「息子が興味を持った!」という嬉しさと、
「こういうおもちゃがあるんだ…!」という驚きが重なり、
そこから私の木製おもちゃ沼が始まりました。
あれから数年、手の届くものは実際に買って試し、ますます虜になる日々です(笑)
今回は、そんな私がこれまで見てきたなかでも
「これはいつか手にしてみたい」と憧れ続けている
インスタでも人気の海外老舗おもちゃブランドと、その代表的なおもちゃたちをご紹介します。
Neaf(ネフ)|スイス
1954年、Kurt Naef(クルト・ネフ)によりスイスで創業されたネフ社は、当初は家具やインテリアを製造していました。
しかし、1958年に顧客にすすめられたおもちゃ作りで、リボンの形の新しい積み木「ネフスピール」を誕生させると、おもちゃ作りを本格化。
1962年に現在のネフ社を創立しました。
はじめはネフ夫妻だけで出発した小さなメーカーでしたが、新しい発想のおもちゃを次々発表し、20世紀後半のおもちゃの歴史に多くの影響を与えていくことになります。
現在は、ネフ社の製品の多くが外部デザイナーの作品を製品化したもので、カタログやパッケージにもデザイナーの名が記されています。
これは、単なるおもちゃではなく『作家の作品』としての付加価値と『質の高い木のおもちゃを製作する技術がネフ社にある』という証明になっており、ものづくりをする人々に広く認められている由縁になっています。
おもちゃ作りを始めてから60年以上経った現在でも、Naef(ネフ社)は業界の先駆者の名に恥じない独創的な木のおもちゃを作り続けています。
▶代表作:ネフスピール
→ 幾何学の美しさが凝縮された、積むための“立体構成ブロック”。
Grimm’s(グリムス)|ドイツ
1978年、Spiel und Holz Designとして創業。
2006年からは、Grimm'sが業務を引き継ぎ現在の形に発展させました。
シュタイナー教育の『自分で考えて、決断して、行動する』という考えに基づき、
使い手が自分の創造性を思う存分に羽ばたかせることができるような、調和の取れた色彩とシンプルなデザインで作られています。
▶代表作:レインボーアーチ
→ 遊んでも、飾っても、美しい。グリムスの世界観を象徴するアイコン的存在。
BRIO(ブリオ)|スウェーデン
1884年、スウェーデン南部の小さな町でイウアー・ヘングトソンによって設立。
もともとはバスケットなどの木工品を作る工房でしたが、1907年にはじめてのおもちゃ「オスビィの馬」が商品に加わりました。
1940年代からはスウェーデン王室御用達となり、現在まで世界中の子どもたちから長年愛され続けています。
ブリオの代表格とも言える木製レールウェイは、1952年にその前身となる「ミニチュア鉄道」からスタート。
列車同士を“連結させて動かす”という遊びの基礎を確立。その後も半世紀以上にわたって追加・改良を続け、今では「木製レールといえばブリオ」という定番ブランドになっています。
▶代表作:木製レールシリーズ
→ 子どもの「つなげる・走らせる・想像する」を引き出す定番アイテム。
nic(ニック)|ドイツ
1980年頃から上質で堅牢な乗り物シリーズで知られた木製玩具メーカーでしたが、1991年に現在の経営者ヨゼフ・ヘルテンベルガーに変わり大きく成長しました。
遊びの選択肢が広がり、原材料が高騰するなど、多くの木製玩具メーカーが苦戦を強いられている昨今の玩具業界の中で、
織り機「イネス」のボーン社、ドールハウスのボード・ヘニッヒ社、ヴァルター社など、歴史あるメーカーの事業を引き継ぎながら、現在も生産を続けています。
方向を見失わず、確固たる信念を持って歩み続ける姿勢は、国内外で高く評価されています。
▶代表作:カラーリング
→ 玉がクルクルと回る仕掛け系おもちゃ。見た目の美しさと手応えのバランスが絶妙。
Beck(ベック)|ドイツ
創業者のクリストフ・ベック氏は、戦時中にロシアで捕虜となり、戦災孤児のために機械技師マイスターの技術を活かした木製おもちゃを作るようになりました。
その経験をもとに戦後の1946年に木製玩具工房を設立。これがベック社の始まりです。
次第にドイツの幼稚園や施設の子ども達の手にも渡るようになり、おもちゃ業界でも評価され、広く知られるようになりました。
特に、1958年に「玉転がしのおもちゃ」(クーゲルバーン)の原理を取り込んだおもちゃを世に出したベック氏は、現在でも「玉転がしのおもちゃ」の先駆者と言われています。
▶代表作:玉の塔(ローラートイ)
→ 玉がコトコトと転がる音が心地よく、じっと見入ってしまう中毒性あり。
憧れのおもちゃたちを、選択肢に
木製おもちゃに魅せられてはや数年。
いろいろなおもちゃを調べたり、実際に遊んだりもしてきましたが、
長く愛されているおもちゃには、それだけの理由がある――そう感じた出来事があります。
それは、我が家に初めてBRIOがやってきて、息子と遊んでいたときのこと。
普段はまったくおもちゃに興味を示さない夫が、興味深そうに手を伸ばし、
「このレールはすごく質がいいね。どこのおもちゃ?」と聞いてきたんです。
今は遊びの選択肢が広がり、おもちゃ以外の遊びもたくさんあるし、
もっと安価に手に入る類似品もあります。
それでも、素材や仕掛け、色づかい、そして子どもへのまなざし――
単なる“モノ”ではなく、“文化としてのおもちゃ”を作り続けてきたブランドの深みが、
その瞬間、夫にも届いたのかもしれません。
とはいえ、昨今は物価高や原材料・輸送費の高騰により、
海外製おもちゃは価格が上がり、手を出しづらくなってきているのも現実です。
だからこそ、知ってほしい。
この記事が、おもちゃの選択肢を広げる、ひとつのきっかけになったら嬉しいです。